茅野の特産といえば天然の棒寒天。この地で育まれた伝統の食文化であり、生産量日本一を誇る茅野の地場産業です。農閑期、田んぼに寒天がずらりと並ぶ干し場の風景は、茅野の冬の風物詩。でも、どんなふうにつくられているのか地元でもふれる機会はなかなかありません。そこで、生産者の茅野さんにお話をうかがい、寒天製造工場や干し場を見学しました。「寒さが厳しく乾いた晴れの日が多い、美しい水の豊富な茅野だからこそできる」という寒天づくり。寒天干しの体験やバリエーション豊かな寒天料理のふるまいもあり、この地ならではの文化と原風景を体感することができました。
案内役は生産者の茅野さん。工場をめぐり、寒天づくりの工程を紹介してくれました。これは原材料の海藻を煮込む大きな窯。寒天の材料は海藻。こんな山間に海の幸が運ばれてきて、姿を変えています。
ふだんは田んぼのこの場所が、冬は寒天干し場に。生天を干す「天出し」作業なども体験しました。標高約1000メートル。豊かな水、冷たく乾いた空気、朝夕の寒暖差、高い晴天率。この条件で天然寒天が生まれているのです。
試食では、干す前のところてんや寒天味噌汁、寒天をつかった甘酒プリンもあり、「こんな料理にも使えるんだ」「おいしいレシピ、もっと知りたい」と皆さんにっこり。「ふだんの生活に寒天をとり入れていきたい」「和菓子店や料理研究家などと輪を広げると発信につながるのでは」といった声もありました。
茅野での寒天の製造は温暖化や後継者の不足などの理由から、どんどん減ってしまっています。これからも伝統の産業を残していくためには、新しい売り方や食べ方を提案したり、もっとみなさんに知ってもらったりする必要があると考えています。お客様から教わることも多く、サロンでは地域の人の感想や意見もうかがうことができ、とても刺激を受けました。
きれいな水と寒さ、お日様の光を活かしてつくる寒天ほど茅野の特産にふさわしい製品はないかもしれません。茅野に住む方には、自慢の天寄せをふるまってくださる方も少なくありません。そんな寒天をあらためて知っていただき、茅野の自慢としてこれからの世代にも残していきたい。そう思ってサロンを企画しました。「こんな風につくっていたのか」「こんな食べ方もあるんだ」と、新しい発見もちらほら。話し手も参加者も笑顔の1日になりました。