常設展
「生きる姿・生誕120年 長田平次の彫刻」
■生きる姿をテーマに家族、親子の姿などが現れた作品を展示 ■新日鉄音楽賞特別賞受賞記念 木之下晃が撮る「世界の音楽家」 ■生誕120年を迎える茅野市出身の彫刻家・長田平次を特集 ●会 期 平成20年2月21日(木)~3月30日(日) ●会 場 茅野市美術館 常設展示室 ●開館時間 9:00~19:00 ●休 館 日 毎週火曜日 ●観 覧 料 無料 ●問い合わせ 茅野市美術館(茅野市民館内) Tel 0266-82-8222 |
生きる姿 | 宮芳平「母と子I」1954年 |
すべての作品には、作者の「生」に対する感覚、感情が凝縮されていますが、今期の収蔵作品展ではその一端を紹介します。 愛情、輪廻転生、はかなさ、ある瞬間での生命の輝き、共生・・・作者は、それぞれの視点で、生物、人々が生きる姿や、自らの内にある「生」に対する感覚を見つめ作品に表現しています。 母子像をはじめ、親子や家族の姿が表わされている作品では、その間に流れる愛情や結びつきを感じることができるでしょう。その中でも母子像は、母子間の祈りにも似た愛情や、構図的なおもしろさなど作家の創作意欲をかきたてる様々な要素を持っており、作品のテーマとして取り上げられることが少なくありません。今回の展示でも、収蔵作品のなかから3人の作家が表現した母と子の姿を紹介しています。 また、今回は、世界の音楽家や劇場の写真を撮り続けている音楽写真家、木之下晃の写真を6点展示しています。木之下晃は、本年1月、音楽文化の発展に貢献した個人に贈られる第18回新日鉄音楽賞の特別賞を受賞しました。音楽家たちの一瞬の表情やしぐさをとらえたモノクロの写真からは、その音楽家の「生き様」や、演奏時のエネルギーをひしひしと感じとることができます。 それぞれの作品から、生きる姿がいろいろな側面をもっていることを改めて実感できるでしょう。 |
生誕120年 長田平次の彫刻 (1888~1964) |
本年は茅野市出身の彫刻家、長田平次(おさだへいじ)の生誕120年にあたります。この機に、茅野市美術館が所蔵するさまざまな長田作品を展示しその魅力を探ります。 長田平次は、1888(明治21)年、茅野市玉川穴山の指物師の家に生まれました。1916(大正5)年に上京、朝倉文夫、藤井浩祐に師事し、東京美術学校(現東京芸大)彫刻科に学びます。1927(昭和2)年、第8回帝展にて「初夏」が初入選した後、戦前は帝展、文展、戦後は日展、日彫展、白日展、信濃美術展、長野県展を中心に活躍を続けました。 長田は、裸婦を中心に、多様な人物像を制作しています。何通りものポーズをとる数々の立像や座像からは、体の動きと線とを丹念に研究し、制作に活かしていく長田の彫刻に対する丁寧で真摯な姿勢がうかがえます。代表作の一つでもあり、第1回信濃美術展に出品された「宇宙」は、3人の裸婦によって構成されています。天、地、人を表している3人の動作には自然な流れがあります。一方、第9回日彫展に出品された「土用波」は、穏やかな作風の長田彫刻のなかで、一種独特な雰囲気を持っています。「土用波」は、うねるような激しい波が、思いきりしなやかなポーズをとった人体に形を借りて表現されている、躍動感あふれる作品です。寄せては返す夏の大波と、人間の激情とが重ね合わされているかのようでもあります。 長田平次の彫刻作品においては、どの作品からも内面に湛えた力が感じられます。それは、作者が入念に人物の動きを研究し、体の力点、重心を正確に把握していたからではないでしょうか。細かなところまで注意が行き届いた彼の作品からは、バランスのとれた美しさが伝わってきます。 |
長田平次「髪をうつす」1959年 |
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