「私たちは、不思議の国に迷い込んで途方にくれている」
不思議の国に、行くのは、意外と、簡単です。私たちは、あっさりと、不思議の国に行く事が出来ます。ただ、それを知らないヒトや、忘れたヒトが、たくさんいるから、『不思議の国のアリス』は、永遠に、優れた、手引き書であり続けているのです。

想像力の翼を、大きく拡げること。震災を経験し、想像力の必要性は、ますます大きなものとなりました。厳しい時代の中で私たちは、ともすれば大きなうねりに流されていってしまうかもしれない。
しかし、想像力は「相手を感じさせる」「世界を感じさせる」そして私たちは、「自ら考える」というアティチュード(態度)を、獲得していけるのです。
ファンタジーの素晴らしさは、現実の枠組みをあっさりと跳び越え、私たちを楽しく驚かせ、最後には、たくさんの想像力の翼を拡げる方法を、私たちに残してくれる事ではないでしょうか。

演劇において《作品》は、観客がいなければ成立しません。そこで起こっている事を観客が受け取ってはじめて、その観客の人生に重なるのです。その場にいる全ての人がそこにいることではじめて成り立つ、そんな作品がつくれたら・・・。今回の作品は、舞台上のアリスを追うのではなく、観客自身がアリスとなって、舞台＝不思議の国を探検するような作品になる予定です。子どもも大人も含めて、自分が迷い込んでしまった感覚を持って頂けるような、仕掛けを用意して・・・。原題にある『Alice's Adventures in Wonderland』のように、一人一人の心の冒険が、今始まります。
立山ひろみ（演出家・ﾆｸﾞﾘﾉｰﾀﾞ代表）